現在の海水は塩辛いですが、46–40億年前に地球ができたときの海水はどんな味だったと思いますか?
①甘い
②苦い
③酸っぱい
④無味
それでは、地球誕生当時の風景から、海水の味について考えてみましょう。
隕石の大量落下が生んだ大気と海洋
まず、46億年前に地球が誕生した時、地球には大気と海洋がなかったことが判明しました。地球は大気と海洋成分を持たないエンスタタイトコンドライトでできたことが判明したからです。
次にわかったことは、大量の隕石・小惑星(最大500㎞径)が月と地球に落下したことです。その落下の年代は、43.7–40.0億年前で、月だけでなく地球にも同じ時期に月よりも沢山落下しています。これは短期間のうちに起きたのではなく、約2億年かけて落下衝突を繰り返したために、地球上に大気と海洋成分が生まれました。
この2億年という長い時間をかけて、3–5㎞の厚さの海洋が誕生したのです。海の厚さの上昇速度は、1,000年で10㎝–1m程度になります。この期間を通して、ゆっくりと大気と海洋が成長したのであり、これは現在の大気1気圧時における海洋の体積(厚さに換算すると水深3.8km程度)に相当します。
このときの様子を、もう少し具体的に考えてみましょう。
約2億年の間に、大気・海洋成分を含む大小様々な炭素質コンドライト成分が地球・月に落下したことによって、地球表層の原初大陸が破壊粉砕されます。直径500㎞の巨大衝突が起きると、瞬時に原初大陸は蒸発してプラズマになり、原初大陸も蒸発して直径5,000㎞のクレーターが生まれ、マントルが剥き出しになり、ガスや塵は宇宙空間に飛び出すものもありましたが、その多くは地球重力に引っ張られ、大気と海洋になりました。

すると、地表に小さな湖や海洋ができ始め、海洋/湖は太陽に暖められて蒸発して雲になります。そして、降雨は河川ネットワークをつくり、大陸の岩石を風化・浸食して岩石の鉱物が溶け出し、大気・海洋からマントルまでの間に物質が循環する経路が誕生したのです。

地球の金星化はいかにして避けられたか
このように、巨大な小惑星や大小の隕石が衝突すると、地球表層の大陸が破壊され、やがて河川を通じて、生物を誕生させる無機・有機栄養が生まれ、その河川を通じて海へと運ばれるようになります。
ただし、最初の海洋は、無水の地球を覆う原初大陸の中の硫黄やハロゲン元素と水が化学反応しており、現在のような正常な海ではありませんでした。また、45.67億年前にできた原初の大陸地殻成分と、炭素質コンドライト起源の物質が混合します。
その結果、最初の海洋化学組成は、①塩分が現在の10倍で、死海の海と同じ程度であり、②海は強酸(pH=1)になりました。
当時の地球表層は、45.67億年前にマグマオーシャンが固化して生まれた、厚さ100kmの大陸地殻(KREEP玄武岩とアノーソサイト:白い斜長石岩)が全地球を覆っていましたが、巨大隕石の重爆撃で大陸が破壊され、更に雨が降り始めたので、これらの岩石と水が化学反応して、生命誕生に必須の元素(P,O,N,C,H,S,Ca,Fe,Mgなど)が、イオンとして海洋に溶け込みました。しかし、強酸、強塩分なので、海では生物誕生は不可能でした。
しかし、③大気・海洋が生まれると、海洋表層が蒸発して、大気に水分を運び、大気循環が始まり、現在に近い大気・海洋成分のグローバルな気象が生まれ、清浄な淡水が陸地を潤します。そして、④この時の大気は、約2億年の時間を費やして、合計すると約400気圧のCO2成分と約100気圧の窒素(N2)を地球に降らせたはずです。
もし、これらが一瞬で地球に加えられていたなら、地球は確実に金星化したでしょう。この点についても、少し詳しく触れておきましょう。
先に述べた通り、小惑星+隕石の落下は約2億年の長時間にわたっていたことが、月と地球に残された証拠から判明しました。こうした地質学的な証拠から、地球表層の原初大陸が、40億年前までにほぼ全部消失したことが分かっています。時々、巨大な小惑星の衝突が続いたために原初大陸は割れて粉々になり、巨大クレート直下のマントルは加熱され、激しいマントル上昇流がやがて大陸分裂を促して、プレート運動が始まりました。
そして、このプレート運動により、⑤大陸やプレート表層に固定される炭酸塩鉱物(大気CO2を鉱物内部に固定)がプレートとともにマントルに沈み込むために、大気CO2の濃度上昇が抑えられ、常時数気圧以下になり、地球の金星化が避けられたのです。
さらに、原始地球の陸上の湖水に、最初の生物が生まれたことの意味も大きいでしょう。シアノバクテリアなどの微生物(植物)は、大気CO2の消費者だからです。

生命惑星・地球の誕生
地球は、この時点で、生命惑星に昇格しました(40億年前までに地球生物が誕生していた証拠は、東京大学・小宮教授グループにより発見されています)。水惑星地球の誕生と、生物誕生の結果が、地球金星化を防いだのです。
生物が大気CO2の消費者になり、生物の体は死ぬと堆積物の中に閉じ込められて、大気から隔離されるからです。そのために、大気のCO2が数気圧以上にはなることはありません。さらに、堆積物自身もプレート運動でマントルへと帰ります。これが、地球と金星の運命を異なるものにしました。
⑥太陽系惑星の中で、地球だけが、
1)プレートテクトニクスを持ち、
2)大きな大陸(その上に膨大な量の生物が棲む)があり、
3)青い海洋が地球を覆い、
4)大陸を中心に生物圏を持っています。
実は、これら4つの条件が、生命惑星地球を特徴づけているのです。
これはオーストラリアのグループが初めて1986年頃に指摘したことですが、その意味を新しい証拠とともに解いたのが、我々、東京工業大学の全地球史解読研究でした(2017年頃)。40億年前までに最初の微生物が生まれていた証拠の発見と、これらの生物たちが、広大な陸上の淡水環境でCO2を気体からアミノ酸、タンパク質、遺伝子、細胞膜(固体)に固定して大気のCO2を消費したために、大規模な炭素循環が始まったことを明らかにしたのです。